実家じまい・空き家

相続放棄すれば空き家と無関係?誤解されやすい保存義務と放棄前の注意点

相続放棄をすれば空き家と完全に無関係になれるとは限りません。改正民法940条の保存義務、全員放棄した家の行き先、放棄前の家財処分と単純承認、3か月の熟慮期間について、よくある誤解を正しながら整理します。

しまいごとノート編集部 更新:
相続放棄を迷いながら、誰も住まなくなった実家の門の前にたたずむ人の情景

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目次
  1. 「放棄すればすべて終わり」と考えていませんか
  2. 誤解1「放棄した瞬間、家の管理責任はゼロになる」
  3. 誤解2「全員が放棄すれば、家は自動的に国や自治体のものになる」
  4. 誤解3「放棄する前に、家の中だけでも片付けておけばいい」
  5. 誤解4「放棄はいつでもできるから、ゆっくり考えればいい」
  6. 放棄するか、相続して手放すか。分かれ目の整理
  7. 「放棄=即・無関係」ではないからこそ、動く前の確認を

「放棄すればすべて終わり」と考えていませんか

老朽化した実家を相続することになったとき、「相続放棄をすれば空き家とは無関係になれる」と考える方は少なくありません。たしかに相続放棄が認められれば、その人は初めから相続人でなかったものとして扱われ、借金も不動産も引き継ぎません。

ところが実務では、「放棄したのに空き家の管理から離れられない」「放棄前の行動が原因で放棄が危うくなる」といったつまずきが起こり得ます。2023年4月1日に施行された改正民法で、放棄後に誰がどこまで空き家に責任を持つのかのルールが整理されたためです。

誤解1「放棄した瞬間、家の管理責任はゼロになる」

実際には、放棄の時点で家を「現に占有」していた人には、引き渡すまで保存義務が残るとされています。

改正民法940条では、相続放棄をした人が放棄の時に相続財産(実家の建物など)を「現に占有している」場合、次の相続人または相続財産清算人に引き渡すまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもってその財産を保存する義務を負うと定められました。

「現に占有」とは、たとえば次のような状態が典型例とされます。

  • 被相続人と同居していて、放棄後もその家に住み続けている
  • 鍵を預かって家財の出し入れや戸締まりを事実上管理している

逆に言えば、遠方に住んでいて実家に一切関与していなかった相続人は、放棄すれば保存義務を負わないと整理されました。改正前は「管理義務」が誰にどこまで及ぶのか条文上あいまいで、関与のない相続人まで責任を問われかねないという不安がありましたが、この点は2023年施行の改正で明確になっています。なお、この見直しは相続登記の申請義務化(2024年4月施行)などと同じ、所有者不明土地問題への一連の法改正の中で行われたものです。

自分が「現に占有」に当たるかどうかは事案ごとの判断になるため、同居や鍵の管理など思い当たる事情がある場合は、司法書士や弁護士に確認しておくと安心です。

誤解2「全員が放棄すれば、家は自動的に国や自治体のものになる」

実際には自動的には移らず、相続財産清算人の選任という手続きが必要とされています。

相続人全員が放棄すると、その家は「相続人のいない財産」になりますが、それだけで所有権が国に移るわけではありません。債権者などの利害関係人や検察官の申立てにより、家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、清算の手続きを経て処理される流れになります。申立てにはまとまった額の予納金を求められる場合があり、数十万円規模になる例もあるとされています。この予納金の水準は2026年7月時点で語られる一般的な目安にすぎず、実際の金額や運用は家庭裁判所が事案ごとに定めるため、申立て前に裁判所や専門家に確認してください。

清算人が選任されて家を引き渡すまでの間、誤解1で述べた「現に占有」する放棄者の保存義務は続く。放棄したのに誰も申立てをしなければ、事実上の宙づり状態が長引くこともあります。

また、「最終的に国に引き取ってほしい」だけであれば、放棄ではなくいったん相続したうえで土地を国に引き取ってもらう道もあります。建物付きでは使えず事前解体が必要になるなどの条件は、相続土地国庫帰属制度の要件と費用で確認できます。

誤解3「放棄する前に、家の中だけでも片付けておけばいい」

実際には、放棄前に相続財産を処分すると単純承認とみなされて放棄できなくなる可能性があります。

「迷惑をかけないように家財だけ処分してから放棄しよう」という発想は自然に思えますが、法的にはかなり危険です。相続財産を処分した相続人は、相続を単純承認したものとみなされ得るためです。貴金属や骨董品など価値のある遺品の売却・処分は特に問題になりやすく、形見分けの範囲でも線引きは微妙です。どこまでが許容されどこからが危ないのかの具体的な考え方は、相続放棄前の遺品整理と単純承認の線引きで詳しく整理しています。

放棄を選択肢として残したい段階では、片付け業者への依頼や家財の売却を急がず、まず専門家に相談してから動くのが原則です。

誤解4「放棄はいつでもできるから、ゆっくり考えればいい」

実際には、相続の開始を知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があるのが原則です。

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月(熟慮期間)以内に、家庭裁判所に申述して行うものとされています。裁判所の案内でも、この期間内に放棄・承認を判断できない事情があるときは、期間の伸長を家庭裁判所に申し立てられるとされています。

3か月は、財産と負債の全体像を調べ、家の資産価値を見極めるには意外と短い期間です。「借金はないが、売れない空き家だけが残る」というケースでは、放棄すべきかどうかは家の売却可能性に大きく左右されます。相続して売る場合に何をどの順番で進めるかは、相続した実家を売却する流れを先に眺めておくと判断材料になります。

放棄するか、相続して手放すか。分かれ目の整理

ここまでの誤解を踏まえると、選択肢はおおむね次のように比較できます。

選択肢向いているケース主な注意点
相続放棄借金が資産を上回る、関わり自体を断ちたい現に占有していれば保存義務が残る。3か月の期限
相続して売却立地や状態から買い手が見込める相続登記(義務化済み)や片付けの段取りが必要
相続して国庫帰属売れない土地だが建物は解体できる建物付き不可・負担金などの要件審査あり
相続して管理継続将来利用や親族の意向で当面手放せない管理の手間と固定資産税が続く

放棄を選ばない場合や、放棄後に引き渡しまで家を保存する必要がある場合、遠方からの見回りは現実的に負担が大きくなります。定期巡回を代行してもらう選択肢とその費用感は空き家管理サービスの費用相場で比較できます。

「放棄=即・無関係」ではないからこそ、動く前の確認を

相続放棄は強力な手段です。ただし「現に占有」していれば引き渡しまで保存義務が残ること、全員放棄しても家は自動的には国に移らないこと、放棄前の家財処分が単純承認につながり得ること、そして3か月という期限があること。この4点を知らないまま動くと、放棄そのものが揺らいだり、想定外の責任が残ったりします。相続放棄は、一度受理されると後から撤回することは基本的に認められていないとされています(取扱いの詳細は家庭裁判所や専門家に確認してください)。実家の状態と負債の全体像を確認したうえで、期限内に司法書士や弁護士など専門家、あるいは家庭裁判所の手続き案内に相談してから判断してほしい。

出典

相続放棄空き家保存義務相続財産清算人熟慮期間実家じまい
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しまいごとノート編集部

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