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実家・空き家は貸すか売るか|賃貸に向く条件と収支試算の判断基準

実家・空き家を貸すか売るかの判断基準を整理。立地の賃貸需要、リフォーム費用の回収年数、大家業の手間、貸すと空き家の3,000万円特別控除が使えなくなり得る注意点まで、収支試算の考え方とあわせて解説します。

しまいごとノート編集部 更新:
誰も住まなくなった実家の縁側で、賃貸と売却の資料を並べて考え込む様子

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目次
  1. 「売るのは忍びないから、まず貸す」の前に
  2. 判断基準1:その立地に賃貸需要は本当にあるか
  3. 判断基準2:リフォーム費用は何年で回収できるか
  4. 判断基準3:大家業の手間とリスクを引き受けられるか
  5. 貸す前に確認したい税制のタイミング
  6. 貸すのに向く条件・売るのに向く条件
  7. 「残したい」気持ちにどう向き合うか
  8. 結論を出すための順番

「売るのは忍びないから、まず貸す」の前に

親が住まなくなった実家について、「売ってしまうのは忍びない。とりあえず貸しておけば家賃も入る」と考える方は少なくありません。この発想自体は自然なものですが、賃貸に出すことは売却の先延ばしではなく、初期投資と継続的な手間を引き受ける小さな事業を始める判断に近いものです。

しかも後で詳しく触れるとおり、一度貸してしまうと、その後に売る際の税制上の特例が使えなくなる可能性があるため、「迷っているからひとまず賃貸」という順番は、結果的に高くつくことがあります。貸すのに向く条件と売るのに向く条件を正直に並べ、収支試算の考え方と判断の順番を整理します。

判断基準1:その立地に賃貸需要は本当にあるか

賃貸経営の成否は、リフォームの質よりもまず立地で決まります。感覚ではなく、次のような具体的な材料で確かめてみてください。

  • 賃貸情報サイトで、同じ町名・似た間取り・築年数の物件の募集家賃と掲載期間を調べる(長期間掲載され続けている物件が多い地域は、借り手がつきにくいサインです)
  • 最寄り駅・スーパー・学校・病院への距離と、車がなくても暮らせるかどうか
  • 周辺に工場・大学・大きな事業所など、単身者や転勤族の需要源があるか
  • 人口が減り続けている地域か、世帯数が維持されている地域か(自治体の統計で確認できます)

似た条件の募集がほとんど見つからない地域では、「相場が分からない」こと自体が需要の薄さを示していることが多いものです。賃貸に踏み切る前に不動産会社へ賃料査定を依頼して、現実的な想定家賃を把握しておく必要があります。

判断基準2:リフォーム費用は何年で回収できるか

古い実家をそのまま貸せるケースはまれで、多くの場合は水回りの交換・内装の更新・場合によっては耐震補強など、貸し出す前の初期投資が必要になります。ここで役立つのが、回収年数の考え方です。

試算の項目考え方の例
初期投資リフォーム費用+募集にかかる費用(例:300万円)
年間の想定家賃収入月額家賃×12か月×想定入居率(例:月6万円×12か月×9割=約65万円)
年間の経費固定資産税・火災保険・管理委託料・修繕積立など(例:年20万円)
年間の手取り収入−経費(例:約45万円)
回収年数初期投資÷年間の手取り(例:300万円÷45万円=約6.7年)

上の例では、およそ7年間貸し続けてようやく初期投資を取り戻せる計算です。回収前に大きな修繕(給湯器・屋根・外壁など)が発生すれば回収はさらに遅れますし、築年数が古い建物ほどその確率は上がります。回収に10年以上かかる試算になるなら、賃貸は事業として厳しいと考えたほうが現実的でしょう。

なお、ここで挙げた金額はいずれも2026年7月時点の一般的な水準を基にした試算例にすぎません。実際の家賃相場やリフォーム費用は地域・物件で大きく異なるため、複数社の査定や見積もりで最新の数字に置き換えて判断してください。

判断基準3:大家業の手間とリスクを引き受けられるか

収支が成り立ちそうでも、賃貸経営には数字に表れにくい負担があります。設備の故障は貸主負担での修理が原則で、連絡は休日や夜間にも入ります。管理会社に委託すれば負担は減りますが、その分の委託料がかかります。退去のたびに原状回復費用と募集期間が発生し、その間の収入はゼロになる空室リスクもあります。家賃滞納・近隣トラブル・退去時の精算など、人と向き合う場面も避けられません。さらに、入居者がいる物件は貸主の都合だけで退去を求めることが難しく、売却するにも買い手が限られ価格が下がりやすくなります。「合わなかったら売ればいい」が通用しにくいのが賃貸の特徴です。

遠方に住んでいて管理会社にすべて任せる前提なら、委託料を織り込んだうえで収支が回るかを再計算しておく必要があります。

貸す前に確認したい税制のタイミング

相続した空き家を売る場合、国税庁の案内(No.3306)にある「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」により、要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円(2024年以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は最大2,000万円)を控除できるとされています。

この特例の要件の一つに、相続から譲渡までの間、その家屋や敷地を事業・貸付け・居住の用に供していないことが含まれるとされています。つまり、一度でも賃貸に出してしまうと、後で売却する際にこの控除を使えなくなる可能性があるのです。控除額が大きいだけに、数年分の家賃収入より税負担の差のほうが大きくなるケースも考えられます。

また、適用には相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡するという期限もあるとされており、「しばらく貸してから売る」という順番はこの点でも不利に働きかねません。建築年や耐震基準など細かな要件は空き家の3,000万円特別控除が使える要件で整理していますが、適用可否の最終判断は必ず税務署や税理士に確認してください。

貸すのに向く条件・売るのに向く条件

ここまでの基準を、正直に一覧にすると次のようになります。

貸すのに向く条件売るのに向く条件
駅近・生活利便性が高く、周辺の空室が少ない賃貸需要が薄く、募集しても長期空室が見込まれる
リフォーム費用の回収が10年以内に見込める貸せる状態にするための初期投資が回収困難
修繕・空室・入居者対応の手間を引き受けられる遠方在住などで管理に関わり続けるのが難しい
将来自分や家族が住む具体的な予定がある住む予定がなく、3,000万円特別控除の期限内に動ける
当面の売却価格に納得できず、待つ体力がある現金化して相続人間で分けたい事情がある

売る方針に傾いたら、名義変更(相続登記)や査定の順序を相続した実家を売却する流れで確認しながら進めると迷いが少なくなります。建物の傷みが激しい場合は、解体して更地で売るか、そのまま売るかという比較も必要になります。

「残したい」気持ちにどう向き合うか

判断基準を並べても決めきれない理由の多くは、収支ではなく気持ちにあります。育った家を手放すことへの抵抗、親に申し訳ないという感情は、無理に切り捨てるべきものではありません。

ただ、「気持ちの整理がつくまで保留」を無期限にすると、建物は傷み、税制の期限は過ぎ、選択肢は狭まっていきます。おすすめしたいのは、期限を切った保留です。たとえば「2年後の命日までに結論を出す。それまでは管理を続ける」と家族で決めてしまう方法があります。保留期間中の見回りや通風・通水が負担なら、空き家管理サービスの費用相場を比較して代行を挟む手もあります。管理費用を実際に払ってみると、「持ち続けるコスト」が肌感覚として分かり、判断が進みやすくなる面もあります。

思い出の品を先に整理しておくことも、気持ちの区切りには有効です。家そのものを残すかどうかと、思い出を残すかどうかは切り分けられます。

結論を出すための順番

貸すか売るかは、立地の賃貸需要、初期投資の回収年数、手間とリスクの許容度の順に確かめると判断しやすくなります。そのうえで、相続した空き家には3,000万円特別控除のように「貸すと使えなくなり得る、期限つきの税制」があるとされるため、迷っている段階でこそ、先に売った場合の手取り額を査定で把握しておく価値があります。賃料査定と売却査定の両方を取り、数字を並べてから気持ちと相談する。この順番なら、どちらを選んでも後悔の少ない決断につながります。税制の適用可否や最新の制度内容は、税務署・自治体・税理士など専門家への確認を忘れないでください。

出典

空き家実家賃貸売却実家じまい空き家活用
この記事を書いた人

しまいごとノート編集部

費用相場・手続き・業者選びの下調べ担当

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